病院で理科の授業をするときに気をつけたこと。
「私は病院で理科を教えています。」
この自己紹介が出来る人は日本で50人くらいじゃないかなぁ。と勝手に思っております。
私が所属している研究会で片手に収まる程度なので、かなりのレアケースなはずです。
今の職場で働き出したとき、それまで理科を教えていた方が講師の先生だったこともあり、引き継ぎ等はない状態でのスタートでした。
誰に向けて?
・今、病院や自宅で理科を教えている人
・いつか病院で教えたいと思っている人
・これから病院で授業をする予定の人
この記事を読むと・・・
・病院内で理科の授業をするときに気をつけることが分かる。
・病院内で理科の授業のやり方が分かる。
もくじ
・理科の授業をする前に病院ではこんな制限がある。
・こんな感じで理科の授業をやりました。
・授業の流れ
・よく使う動画集
・実験について
理科の授業をする前に病院ではこんな制限がある。
病院と学校で授業をする上で最も違うことは、
授業をする場所が学校ではないことです。
いや、そんなの当たり前じゃん。と思うかもしれませんが、一周回って考えるとマジでこれにつきます。
例えば、
学校での授業 |
病院での授業 |
|
1対1で教えること |
ある。 |
ある。 |
子どもが病気であること |
ある。 持病を抱えながら授業を受けている子どもはいる。 |
ある。 |
授業をする場所が学校でないこと。 |
たまにある。 (行事や校外学習とか。) |
基本的にずっとある。 |
という感じで、子どもが病気であることよりも、学習する場所が異なることによる違いの方が多くあります。
では、授業をする場所が学校でないことで、どのような制限があるのでしょうか。
病院で授業をするときの代表的な制限
・マスクは必須。ときにはガウンも(コロナ前からです。)
・授業をするスペースが狭い。(丸椅子と子どものベッドの上の机くらいです。)
・板書ができない。(出来るのは手持ちのホワイトボードだけ。)
・ものを下に置けない、落とせない。(落としたものは、使えません。)
・忘れ物して取りに行きまーす。ができない。(私にとっては制限です。笑)
・理科実験の薬品などの持ち込みができない。
・ガスバーナーなどの火器類の使用ができない。
・大型の実験器具は持ち込めない。
・生物や植物は持ち込めない。
この他にも、生徒の状態や治療の関係で持ち込み出来る教材が限られたり、入室する前に全て消毒をしたりなどがあります。
私は、授業をする上で生徒が病気であることは、それほど大きな問題ではないと考えています。もちろん、投薬や治療の関係で授業ができない日はありますが、それは通常の小中学校でも同じことです。
風邪やインフルエンザや体調不良でお休みします。なんてことは同じようにあります。
それよりも、病気によって環境に制限がかかるわけです。
病気だからできない。よりも、病気になって環境が変わるからできない。という感じです。
こんな感じで理科の授業をやりました。
・授業の流れ
①今日の授業に関する動画を一緒に見る。
②教科書を一緒に読みながら、特に必要な箇所についてはノートをとるorプリントに書き込む
③病室で出来る実験を一緒に行う。
or
③環境の制限のためにできない実験については事前に教師がやったオリジナル実験動画を見る。
④問題を一緒に解く。
流れとしては、かなりオーソドックスです。
マンツーマンでやるので、その子に合わせて組んであげること、地元の学校に戻るので教科書を中心に進めてあげることが、退院後の学習の安心にもつながります。
・よく使う動画
NHK for school
使用率100%に近いです。10minシリーズなんかは、まとめの他に、単元の全体像をつかませるのによく使います。
単発の実験の動画もよく出来ています。
アプリを使うと画面収録も出来るので、通信が出来ない病室でも可能です。
あまり使用することはありません。理由は画面収録すると音声が消えるからです。通信が出来ない環境だと、どうしても使用頻度は落ちますが、使用できるとなるとNHK for schoolにない動画を見たりすることに使っています。
実験動画については、長期休業の期間を使って撮り溜めておくといいと思います。見やすい動画もいいですが、先生が写っている動画を見せると、子どもの食いつきも違います。
・実験について
すでに書いていますが、病院では持ち込める教材に制限があります。そのため、病室で行える実験は限られます。
実験が行える単元としては、物理分野などが行いやすいです。逆に、生物分野、化学分野はほとんど実験を行うことができないと言っても過言ではありません。
そのような分野では、動画教材やフラスコガスバーナーなどの実験器具のみをもっていって、実験のイメージをもたせることも行いました。
また、実験を行う際は、持ち運んだり、狭いスペースでも行えるように器具を工夫する必要があります。
まとめ
ここまで、病院で理科の授業をするときに気をつけたことについて書いてきました。
病室での理科の授業は、教室での授業と比べると大きく制限があるのは事実ですが、出来る範囲の中で最大限工夫することで行える実験もあります。
この記事が病気で入院している子どもたちに関わる先生方のためになれば幸いです。
おわり。