病院や自宅で授業しています。〜訪問教育や院内学級の話〜
「私は訪問教育をしている学校の先生です。」
と、自己紹介で言っても、ほとんどの人は分かってくれません。学校関係者の人も「え?そういうのあるの?」みたいな顔をされることが多いです。(笑)
それもあって普段は「病院や自宅で授業しています。」と答えています。
今回は、そんな病院での訪問教育にみなさん知ってほしく書いています。
この記事を読むと・・・
・病院での訪問教育について知ることができる。
・病院や自宅での授業について知ることができる。
※なお、この記事では、主に病院に入院している準ずる教育課程の児童生徒に行う授業について書いています。
1 訪問教育って何?
心身の障害が重度であるか又は重複しており、特別支援学校等に通学して教育を受けることが困難な児童・生徒に対し、養護学校等教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育。
訪問教育の概要(試案)「特殊教育」第21号
※養護学校は現在では特別支援学校と読みかえます。
対象としては、家庭での教育だけでなく、入所している児童福祉施設や、入院している医療機関での教育も含まれています。
少し、分かりやすく言うと
障害や病気のために学校で授業を受けられない子どものために、先生が自宅や病院に行って授業をします。
という感じです。
病院に入院している子どもたちに対しての教育の形については、下記のような形があります。
※都道府県によって異なります。
授業をする場所 |
籍のあり方 |
|
病弱特別支援学校 |
宿舎 |
転籍・副籍 |
分教室 |
病院(固定) 教室あり |
転籍・副籍 教育相談(籍をうつさない) |
訪問学級(肢体不自由特別支援学校訪問部) |
病院 在宅 教室 |
転籍・副籍 (教育相談) |
健康学園 |
宿舎 |
区内在住 |
院内学級 |
病院(固定給) |
転籍 教育相談 |
引用 「あかはなそえじ先生の ひとりじゃないよ 僕が院内学級の教師として学んだこと」より
2 どんな授業をするの?
①授業形態について
授業の形態は1対1のマンツーマンで行う形態が多いです。
院内学級がある場合などは、集団での授業も行われていますが、同じ学年の子ども達が同時にいるとは限らないので、(むしろ少ないです。)1or2 対 複数のそれぞれに個別指導といった形になるようです。
②授業時数について
訪問教育では、1回2時間の週3日〜で授業を行います。
通常の小中学校のように週に5日、1日4〜6時間のような授業時数ではないため、どのように授業をしていくか計画を立てることは、通常の小中学校以上に重要です。
③授業の内容について
個別指導が基本となるので、生徒の実態や希望に合わせて授業を作っていきます。
例えば、
・地元の学校の進度に遅れないようにしたい。
・勉強ばかりでなく、図工や美術などのものづくりをしたい。
・復習を中心にしたい。
など様々です。
また、病院に入院している生徒の場合、治療のスケジュールなどを把握することが非常に大切です。治療や薬の副作用などで、体調の良し悪しが大きく変わるため、それに合わせた授業を行うことが求められます。
そのため、授業時の体調の把握がとても重要です。授業中の顔色や姿勢、声の様子などから無理をしていないかどうかを察する力が求められます。
3 授業の中でどんなことが大変?
私が思う授業の中で大変なことは、
・地元校の授業進度に合わせて授業をすること。
・限られた環境の中で授業をすること。
この2つです。
・地元校の授業進度に合わせて授業をすること。
病院に入院している児童・生徒の場合、ほぼ100%に近い割合で退院後、地元の学校に戻ります。当然、地元の学校では、週5日の1日6時間の授業が展開されています。一方こちらは週3日120分の授業。当然、通常の学校のような進度で授業を行うと授業進度は遅れます。そのため、なるべく地元の学校の進度に追いつくように授業をしていく必要があります。
学校に戻ったときに、子どもたちが授業で自信を失わないように送り出してあげることも私達の約目だと思っています。
・限られた環境の中で授業をすること。
病院の授業は教室での授業と比べて大きく制限があります。
例えば、理科に関することとして以下の条件があります。
・理科実験の薬品などの持ち込みができない。
・ガスバーナーなどの火器類の使用ができない。
・大型の実験器具は持ち込めない。
・生物や植物は持ち込めない。
※病院によって詳細は異なります。
これだけ聞いても、え?理科無理じゃね?と思うほどです。(笑)
他にも、大きな音や声が出せなかったり、グループでの活動ができない。(そもそもマンツーマン)などがあります。
また、治療の過程の中で病室内に持ち込める教科書やプリント類についても、入室前の消毒などが求められる場合もあります。
このような限られた環境下でも、対応できる力が求められます。できないことを嘆くよりも、その環境で出来ることを最大限生かしていくことが大切だと思っています。
まとめ
学校に関わる人でも知っている人が少ない訪問教育について書きました。
今回書いたのは、主に病院に入院している準ずる教育課程で学ぶ児童・生徒についてです。
自立活動を主とする教育課程については、授業内容などが異なりますので、ご注意ください。
また、詳細についてはお住まいの都道府県教育委員会にお問い合わせください。
おわり。